Arizono lab
Explore beyond
これまでの解像度、これまでの神経回路を超えたその先へ
NEWS
2023年
12月 分子生物学会のシンポジウム「グリア細胞の多様性が紡ぎ出す特異な脳機能」で発表しました。
10月 共著者論文 "Shadow imaging for panoptical visualization of brain tissue in vivo" が Nature Communicationsに掲載されました。
9月 責任著者論文 "The Impact of Chemical Fixation on the Microanatomy of Mouse Organotypic Hippocampal Slices" eNeuroに掲載されました。
4月 白眉特定准教授に着任しました。Arizono labの始まりです!
2月 筆頭著者の総説 "Getting sharper: the brain under the spotlight of super-resolution microscopy" Trends in Cellular Biologyに掲載されました。
ReseaRch scope
様々な超解像イメージイングの技術を駆使することで回折限界を超えた脳の小宇宙を探索します。
脳という一見何の変哲もない柔らかい組織は一体どうやって私たちの日々の思考や行動を生み出しているのでしょう。考えれば考えるほど不思議で神秘的です。一方で脳もまた私たちをとりまく世界と同じように、物理学や物理化学の法則に従う分子で構成されていることには変わりなく、これらの学問の手法に則って研究することができます。これが「生物物理学」の基本的な考え方です。実際、神経細胞の配線から細胞内部での分子の拡散に至るまで、あらゆる生物物理学的要素が脳の機能に影響してきます。逆の言い方をすれば、生物物理学的仕組みの集大成によって脳の働きは実現しています。例えば、脳機能の根幹をなす「シナプス伝達」は、シナプス形状と関連分子の分布によって左右されますし、「学習と記憶のメカニズムとして知られるシナプス可塑性」では、シナプス伝達効率を上げるためにシナプス構造がダイナミックに再構成されることが知られています。このような神経細胞の生物物理学というのは神経科学における一大分野ですが、「脳機能が神経細胞の外の構造からどのような影響を受けるか」ということはあまり知られていません。
< 回折限界
研究対象
ReseaRch INTEREST
グリア細胞や細胞外スペースといった未開拓な神経回路の役者に注目します。
脳の中で神経細胞は無数の制御因子に囲まれています。「神経細胞が浸っている細胞外液」や「非神経細胞(グリア)の一種アストロサイト」はその代表格で、これらの因子は神経細胞の生存や活動に欠かせないばかりか、睡眠や記憶や学習といった高次機能にも関与しています。アストロサイトの突起にはシナプスを制御する仕組みいくつもが備わっており、これらの配置などを変えることで、シナプスの活動から神経細胞の発火パターンまで神経回路を自在に制御する可能性を秘めています。またアストロサイトと神経細胞は主に伝達物質の授受によってコミュニケーションをとるので、神経回路はこれらが拡散する細胞外スペースの粘性や形態の影響も受けているはずです。このように脳を理解する上で神経細胞内部のメカニズムというのは一面にすぎず、神経細胞をとりまく環境によって神経回路は大きく左右されるのです。そこで私たちはグリア細胞や細胞外スペースなど神経細胞の外の構造に着目して研究をしています。
ReseaRch STRATEGY
我々は3つの強力なアプローチを用いて、ニューロン・グリア回路の生物物理学に取り組んでいます。 1.見る 機能イメージング(Ca2+イメージング、電圧イメージングなど)と超解像顕微鏡を組み合わせることで、微細構造と細胞生理との直接的な関係を調べる。 2.操作する 遺伝子ノックダウン、薬理学、化学遺伝学、電気生理学、光刺激などにより、ニューロンやアストロサイトの生理機能を操作する。 3.再現する 1と2で得られたデータを基に、細胞の微細構造を変化させ、細胞生理をシミュレーションすることで、微細構造と細胞生理の関連を検証する。このようなアプローチにより、実験条件では再現不可能な状態の予測も可能になる。